ペルーをターゲットにした金融商品で社会と経済のリターンを実現するクラウドクレジット

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クラウドクレジット株式会社は、高い利益率を求める日本の投資家と、現地の貧困から抜け出すためのファンドを求めている人々をつなぐ投資商品を提供するため、2013年に設立された。代表取締役の杉山智行氏に、今なぜペルーへの投資を行うのか?またペルー経済を金融専門家はどのように観察しているのかを尋ねた。

―クラウドクレジットでは、ペルーの個人や零細事業主の不良債権を買い取り、債権者の信用市場への復帰を支援する小口債権者支援プロジェクトや、タクシー業者を対象としたオートローン等の支援事業プロジェクトについて投資を行っています。なぜペルーを対象としたのでしょうか。

■新興国を対象とした与信を行っていく場合、自由主義というのを第一に、信用市場がしっかりしていることや、暴力的な取り立てをしていない国、金融に関する法整備が整っている国、さらに外資規制が厳しくない国というのが条件になります。
いろいろ検討していく中で、南米の西海岸沿いにある国、ペルーやチリ、アルゼンチン、コロンビアなどが条件にあっていたのですが、中でもペルーは金融の透明性が高い国だと判断しました。また、ペルーの経済成長は目覚ましいものがありますが、資源国で連続した経済成長で安定もしています。それと同時に非効率部分も残っており、超過収益が期待できる要素が多くありました。

―アジアへの進出や投資というのに比べて、南米への投資はハイリスクすぎるのではないかという印象を持ちます。

■日本国内のメディアでは、ペルー経済について取り上げることは少ないのですが、イギリスで発行されているエコノミスト誌が途上国55カ国を並べて、法整備や慣行などをランキング付けしたデータで、ペルーは1位にランキングされています。ペルーの金融環境は高く評価されており、収益性のある投資商品が見込めるのであれば、一番に投資する国として、ペルーが最適だと考えました。今後は、ペルーの成功事例を参考にしながら、ブラジルやパラグアイなどのメルコスールの国にも広げ、さらに太平洋同盟に参加している国も対象に考えています。

―すでにペルーを対象とした商品は、6.8%から10.9%という高い期待利回りで提供されていますが、投資家の皆さんの反応はどうですか?

■ペルーに対して、1996年に起きたペルーの日本大使公邸人質事件のようなイメージが大きいのではないかと思っていましたが、投資家の皆さんは、投資商品自体が面白いとなるとそのことは、ネガティブ要因にはならないですね。当社のWebページでも、ペルー情報を提供していますので、よく勉強されているという印象です。

日本人は日銀の統計などで、預金が好きな国民性だと判断される向きもありますが、実は預金が好きなのではなくて、適切な投資先がないので、結果的に預金の状態だという方が多いと思います。
例えば、イギリス人やアメリカ人の個人投資家で、新興国への投資を主にやっていると言う人は、極めて少ないです。しかし、日本にはたくさんいます。新興国投資に慣れているのが日本の投資家ではないでしょうか。
日本の個人投資家というのは、意外だと思われますがアグレッシブな投資をする人が多いというも特徴です。新興国への投資に慣れている上に、そんなに暴利を求めず安定した投資ならやってもよいと考えている投資家の方がと、社会的な問題を抱えている経済発展途上の国との相性は、世界の中でもベストなのではないかと考えています。

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―ペルーは驚異的な6%経済成長を続けてきていましたが、今年に入りその神話も崩れて下方修正ばかり発表しています。やはりペルーの経済というのは、信頼できないのではないかという意見も聞かれますが。

■確かに、ペルーのウマラ大統領も2013年に宣言していますね。「新興国成長の黄金の10年は終わった」と。それは間違いないと思います。しかしブラジルがマイナス成長に入っている中で、ファンダメンタル的に正しい成長をしているペルーは、成長幅は減ったものの、巡航速度を落としながらも成長を続けているというところに注目しています。同じ太平洋海岸沿いにあるコロンビアやチリのほうが、経済発展の段階としては上ですが、安定度合いということでは、自由主義と堅実体制路線の二本立てが、まったく揺らいでいないペルーは、黄金の10年が終わった後も成長するのではないかでしょうか。

注目したいのは、97年のアジア通貨基金のような短期債務を積み重ねるのではなく、ペルーが長期債務を積み上げているところです。財務政策のマネージメントレベルが高い。そこは外国人投資家の信頼につながります。
日本人の投資が、アジア偏重になっていたので、当社の投資商品があることで、メルコスールや太平洋同盟の国に対象を広げていくと、将来的にも面白い展開になるのではないでしょうか。

―2011年にウマラ大統領が就任した後、公約していた社会的包摂も思うようには実行されていないようです。また支持率も下がっていますが、こうした要素は経済への不安要因になりませんか。

■なぜクラウドクレジットが、ペルーでの投資商品を展開するのか。ペルーは確かに経済発展をしている一方で、国民の7割近くの人は、銀行と取引がない状態です。2011年の大統領就任当時を思い出してもらいたいのですが、ペルーが社会主義政権になるということで、株式も大暴落しペルー経済に対して危機感が生まれました。

しかし、すでにペルーには、よくも悪くも、官僚制度と財界制度が育ってきていることに注目する必要があります。これまでのような社会主義政権=ばらまき政治というのが、できにくい状況にあります。
こうした中で7月には、ムーディーズがペルーの格付けを2段階あげています。つまり大統領就任後のペルーは、市場的に評価がさらに上がっているということです。その反面、貧困問題が残っています。
当社がターゲットにしているのは、この銀行取引ができない貧困層の方たちです。ファンドによる支援を行うことで、経済を安定させ、中間所得層に入って行く。そうした人たちが増えることは、ペルーの貧困問題を解決していく一石にもなるはずです。

―日本とペルーは長い経済協力関係にありますが、ペルーに進出したいという日本企業は、あまりないですね。ペルーを含む太平洋同盟国は、APECなどを通じてアジアとの連携も深めています。日本からも南米に経済活路を見いだせる企業はあるのではないでしょうか。

■現在の個人投資というのは、国債や通貨への投資が主です。しかし、ペルーを対象とした投資商品のように、新興国の中間所得層を増やすという社会貢献的な意義があるものへの投資をすることで、間接的にその国の経済規模を活性化させます。
さらに、いろいろな投資機会を成功事例として発信していくことで、ペルーへの市場進出というきっかけが生まれるのではないでしょうか。
当社が扱っている商品は、マイクロファイナンスではありません。貧困層の中でも上にいる人たちから中間層以下にあたる人たちへの与信です。これは、ペルーの人口の約4割が対象になっています。銀行からお金を借りることができないというセクターの人たちに与信を行うことで、その方たちにも収益性が上がり、ソーシャルリターンとエコノミックリターンの両方が実現できるわけです。

西海岸にある国に共通するのは、自由主義と財政の堅実路線。これを10年間保った国は、「黄金の10年間」の蓄積があります。今後の5年10年で、取り崩していって、崩壊してしまう可能性がゼロではないでしょうが、黄金の10年が終わった宣言の後、格付けのあがっているペルーをぜひ知ってほしいですね。南米ペルーの事情から、日本経済が見えてくることもあるはずです。

 

クラウドクレジット株式会社HP

写真提供クラウドクレジット株式会社:写真上から、杉山代表取締役 中段写真、トルヒーヨにある市場を視察。


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