19歳の日本人・タイで賞金総どりマッチに挑んだ <前編>

2月28日、タイ・バンコクにあるムエタイの聖地ラジャダムナンスタジアムで日本人キックボクサーの志朗が、総額10万バーツ(約31万円)の賞金総取りマッチに挑んだ。


この類の試合に外国人選手が絡むのはひじょうに珍しいということで、現地のムエタイ専門紙には話に尾ひれがついて最低20万バーツの賭け試合と報じた。
通常タイで外国人選手は”お客さん扱い”されるケースが多い。レベルに合ったそれなりの試合が組まれるだけで、毎晩スタジアムに集まるギャンブラーたちの興味を引くことは極めて稀なのだ。そうしてもらうためには彼らにまず名前と顔を覚えてもらわないといけない。
この日の大会プロモーターを務めるオートゥー氏はムエタイ専門紙にこれまでの志朗の実績を挙げたうえで、「並大抵の選手ではなく、必ず(対戦相手の)コーンも手こずるだろう」というコメントを寄せた。プロモーターになりがちなリップサービスではない。オートゥー氏は志朗に2万バーツを賭けるほど、そのポテンシャルを高く評価していた。
契約体重で志朗に2ポンドのハンディが与えられていたのは、ギャンブラーの気持ちを一層引くための手段だったように思えた。タイでは数ポンドの体重差が勝敗を左右するといわれている。
スタジアムの貴賓席には、ペルーの在日総領事と在タイの大使が座っていた。今年1月に日本で志朗の試合を見た在日総領事はキックボクシングに興味を抱き、次はタイで試合をするという話を聞きつけるや、休日を利用して現地の大使を伴ってスタジアムまでやってきたのだ。試合前、貴賓席に挨拶に訪れた志朗とコーンにふたりは花の首飾りをかけた。(続く)

19歳の日本人・タイで賞金総どりマッチに挑んだ <後編>

 

Writer:布施鋼治

1963年7月25日、札幌生まれ。スポーツライター。

大学生時代より執筆業を開始。現在はNumber、共同通信、北海道新聞、ファイト&ライフ、スポルティーバなどに執筆中。
2009年、「吉田沙保里 119連勝の方程式」(新潮社刊)でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。
他の主な著作に「東京12チャンネル運動部の情熱」(集英社刊)、「格闘技絶対王者列伝」(宝島文庫)などがある。
「ファイティングTV サムライ」などで格闘技番組の解説も務める。
写真提供:シンラパムエタイ

 

 


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