真剣を握った高校生

私が札幌の高校に通っていた頃、2種類の部活動があった。ひとつは正規の授業として受ける課内クラブ、もうひとつは希望者だけが集まった課外クラブだ。

 

前者で私は居合クラブを選択した。居合とは、日本刀を用いた日本の武道を指す(正式には居合道)。なぜ高校にそんな風変わりなクラブがあったかといえば、わが母校には剣道の指導者として道内では有名な教師が在籍していたからだ。
「刀を手にする機会などめったにない」
そう思った私は喜んで居合クラブに入部した。同じ志を持った同期は数人しかいなかったと記憶している。
居合クラブでの練習は実に面白かった。模擬刀を使って様々な型を練習するのだが、基本動作のひとつとして「血振り」というのがあった。刀についた鮮血を振り落とすという動きである。そのストレートなネーミングに私は戦慄を覚えた。
今だったら大問題になるかもしれないが、一度だけ私は学校で模擬刀ではなく、真剣を握らせてもらったことがある。模擬刀とは違い、それはとてつもなく重かった。
「これで、人が本当に斬れるのか」
想像したら、鳥肌が立った。
30年前の懐かしい思い出である。

■写真提供:キックボクサー志朗(写真は小学生当時、居合を習っていたときのもの)

 

 

Writer:布施鋼治

1963年7月25日、札幌生まれ。スポーツライター。

大学生時代より執筆業を開始。現在はNumber、共同通信、北海道新聞、ファイト&ライフ、スポルティーバなどに執筆中。
2009年、「吉田沙保里 119連勝の方程式」(新潮社刊)でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。
他の主な著作に「東京12チャンネル運動部の情熱」(集英社刊)、「格闘技絶対王者列伝」(宝島文庫)などがある。
「ファイティングTV サムライ」などで格闘技番組の解説も務める。

 


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