レスリングの五輪除外は日本全体の問題

「レスリングの唯一のモチベーションは五輪。選手を続けていくうえでなくなってしまえば、何を目標にしていっていいかわからない」
重苦しい雰囲気の中、ロンドン五輪フリースタイル66キロ級金メダリストの米満達弘は口を開いた。2月13日、都内で行なわれた、日本レスリング協会の緊急記者会見。


前日、「五輪からレスリングが除外へ」という報道を受けてのものだったが、選手・関係者の誰もが予想だにしなかった出来事だけにショックは大きかった。
会見で福田富昭会長は、IOCから明確な理由を示されていないと唇を噛んだ。
「どういう手を打ったらいいか、わからない状況だ」
レスリングは日本のお家芸ともいえる五輪種目だ。ロンドンオリンピックでは男子と女子合わせて4つも金メダルを獲得し、日本中に明るい話題を振りまいた。最近では第二の吉田沙保里を目指すちびっこレスラーも多いと聞く。さらに礼儀や集団活動も学べるので、親にとってもひじょうにありがたい。見方を変えれば、レスリングは極めて武道的な側面を持つスポーツといっても過言ではない。
しかし、五輪種目でなくなってしまったら、他の五輪種目を選択する子供たちが増えても不思議ではない。ロンドン五輪フリースタイル55キロ級で銅メダルを獲った湯元進一も苦しい胸のうちを語った。「五輪は最高峰の舞台。小さい頃から夢を見てやってきた。頑張っている子供たちを見ると、胸が痛い」
これは、レスリングだけの問題なのか。いや、違う。2020年の五輪の東京招致にも影響を与えかねない、日本全体の問題だ。

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