ペルーのエネルギー鉱山大臣による鉱業、エネルギー分野について投資セミナー開催
ペルーのホルへ・メリノ・タフール・エネルギー鉱山大臣を招いて、鉱業や天然ガスに関するとペルー投資セミナーが、東京千代田区・東京会館で開催された。
今回のペルー投資セミナーは、日本ペルー経済委員会(CEPEJA)、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、日本貿易振興機構(JETRO)の主催で行われた。メリノ・エネルギー鉱山大臣は、ペルーの投資促進庁の鉱業プロジェクト課長を務め、アスティボス・ミネロス鉱山企業の理事を経て、現職。ペルー国内の大規模鉱山開発や水力発電などのエネルギー開発事業に長く携わり、公営事業の民営化への専門家として広く知られている。
セミナーでは、「なぜ今ペルーへの投資が注目を集めているか」という事情から始まった。世界銀行が発表しているビジネスを行いやすい国として、ペルーは南米でチリについで2位と高い評価をえている点と、2050年にもっとも経済成長をしている国の中で、ペルーは南米で唯一、第6位に入っていることについて触れた。
鉱業と天然ガスは、ペルーの二大基幹産業であり、2011年のデータでは、ペルーのGDPのうち、12%が鉱業で占められている。この12年間では20%以上成長しており、ペルーは銅や亜鉛など世界の主要産出国で有り続けている。現在の投資実績でみると、海外投資の22%が中国、米国は18%、カナダ16%と続き、日本からの投資は7%にとどまっている。
ペルーでは、大規模な鉱業プロジェクトであるコンガが、地域住民の反対運動がおこり、プロジェクトの長期中止を余儀なくされたり、天然ガスの外国技術者が誘拐されたりといった問題で、投資そのものに大きな影響を与える事件が続いている。しかし、メリノ大臣は、地域住民が作るコミュニティーと対話を進め、水の安全性を確保し、環境と調和した開発プロジェクトであること、そしてそのプロジェクトが貧困を撲滅するために有効的に働くこを理解してもらうことで、頓挫した開発事業が大きく前進している例をあげた。
こうした問題が起きる背景に、先住民族が持っている文化や生活と近代化の融合の難しさや、持続可能な開発を示してこなかったこと、開発によって得た税金が地方にうまく分散されてこなかった歴史などがあるという。
また、開発を進める地域は、小規模農家が多く、鉱山の開発は、エネルギー鉱山省だけで行うのではなく、農業省との連携が重要であり、実際ペルーでは、農業開発銀行を通じて、小規模農家へ融資を行い、灌漑設備を作るなどの支援をしている。
一方的な押し付けではなく、地域住民も開発プロジェクトに参加しているという共感を、地元コミュニティーが持つように努力することで、スムーズな開発が行われるという実例を話した。
続いて、ペルーの鉱山投資の利点として、チリなどに比べて、コストが安いことで、利益率の高さをあげている。ペルーは、フジモリ政権の頃から、関税撤廃を行えるFTAによる市場開放経済を進めてきている。日本企業からの投資を最も注入したのは、現在調査と発見が進められている天然ガス田のようだ。チリでも天然ガスがあるが、ペルーのはエタンが多く含まれ、プラスチックを生成するのにより向いている。石油化学プラントを運用し、海外に向けた輸出を増やしていことだとメリノ大臣は、将来の展望を説明した。また、地熱発電について、日本の経験を活用し、プーノの地熱発電を開発できるのではないかと語った。
セミナーでは、日本貿易機構(JETRO)海外調査部の吉田憲主査による、「ペルー進出日系企業の経営実態について」、JOGMECの「ペルーの鉱業事情」も合わせて講演が行われた。ペルーの現状では、連続した経済成長が、中間層を増やしている実態が紹介されている。2004年には、49.7%の中間層が、2011年には59.7%に増加。最貧困層は2004年の18%から2011年には9.4%に減少している。今では4人に一人がクレジットカードを持ち、国内には約50カ所のショッピングモールがある。南米の中で国別に比較すると、営業利益が改善したともっとも多く実感しているのが、ペルーにある日系企業のようだ。人口の変動でも、ペルーは日本と違い、10代20代の若い世代が多く、2050年の予測でも、社会で最も稼げる世代多く、少数の老齢世代を支える構図になっている。
こうした状況を踏まえて、中国は積極的な市場開拓をペルーで展開しようとしており、投資の積極性もそのような理由があるようだ。ペルー政府は、観光・資源関連・インフラ関連と海外投資の誘致を積極的に行っており、アジア圏との経済連携を強化していきたいペルーにとっては、アジア経済の雄としての日本企業に、大きな期待を寄せているようだ。
写真:上・講演を行うメリノ大臣。中・開会あいさつを行う日本ペルー経済委員会・宮村眞平委員長 下・本セミナー共催、駐日ペルー共和国・エスカラ大使。